月次のアクセス解析で「見るべき指標」
ここは「5分で診断 アクセス解析病院」。ウェブサイトの問題を抱え訪れる人々が後を絶たない、 院長のロバート先生は巷で名うての名医。今日は研修医の加藤と山本がロバート先生に相談を持ち込む…
- Googleアナリティクスの画面で、
どの数値を改善すれば成約数が伸びるでしょうか?
本当の悩みは?
先日、クライアントにサイトの施策を説明していたんです。その際「内容は把握しました。それではどの指標を改善すれば申し込みが増えるんですか?」と質問されたので、 「成約率を上げることができれば申し込みが増えますよ」と返答したんですが、クライアントが混乱してしまったんです…
どうしてかな? 成約率を上げられれば申し込みは増えるはずだよね? それが分からない相手だとこれ以上の説明のしようがないよね。
でも、「どの指標を改善すればいいのか?」という質問はみなさんがしてきます。 どういう回答をしたらいいのでしょうか?
加藤さんの今回の悩みは「毎月チェックするべき指標を知りたい」ということだね。実は【要点は1つ】なんだ。「どの指標を改善すればいいのか?」という、 質問自体は漠然としているけど、その人は「改善に直接つながる指標」を教えてほしいわけじゃない。 「改善の入り口」を知りたかったんだと思うな。
それでは「サイトをリニューアルして、リスティング広告を出しましょう」と話をすればよかったのでしょうか?
いやいや、いきなり具体策を知りたいのではなく、現在のサイトの問題点を把握し、その問題点に対しての対策をしたいということだと思うよ。
例えば、加藤さんがそのクライアントのサイトに対してアクセス解析をして見えた問題点があったはずだよね?そうですね。月間のアクセス数が2000件未満と少なかったのと、集客している各キーワードの直帰率が高かった点など…
きっと、正しく集客ができていないことと、ランディングページのデザインの見直しが必要だと思いました。そう、まさにそういう話を聞きたいんだよ!質問に対して返答するということだけではなく、もっと悩みの真相について考えながら聞くべきなんだよ。
そうなんですね!今回は質問に対してストレートに返答してしまって、クライアントが混乱してしまったんですね。
改善の入り口は3つ
「どの指標を改善すればいいのか?」と質問してくるクライアントが本当に知りたいのは「改善の入り口」だ。今までただやみくもに 改善策を行ってきたけど、結果が伴わないので困惑しているということが言えるね。そこで、これから挙げる3点をまずチェックするんだ。
- アクセス解析でサイトの現状を把握する
- 把握したデータから仮説を立てる
- 対策により変化した指標をチェックする
アクセス解析でサイトの現状を把握する
まずは、アクセス解析でサイトの現状を把握していこう。加藤さんが見つけた現状の問題点は?
「アクセス数が2000件未満で少ないこと」と、「直帰率が高いこと」です。
OK!ここでみんなが立ち止まってしまうのが、指標の判断基準が分からないことなんだ。画面上の指標を見ても、 「これが高いのか低いのか、わからない」ということがよくある。経験則で判断できることもあるけど、実は簡単な計算式で判断ができるんだ。
【判断基準のための計算式】 アクセス数 × 成約率 = 申し込み数 一般的に言われている成約率は0.5%~5%だ。つまり成約率を1%とした時に、10件の申し込みを獲得するためには、サイトのアクセス数が1000件以上必要ということがいえるよね。 これが判断基準のひとつと言うわけだ。
把握したデータから仮説を立てる
さあここからは仮説を立てるよ。加藤さんが見出した仮説はどんなものだったっけ?
ひとつは「必要な申し込み件数獲得にはアクセス件数が少ないことから、リスティング広告を出稿する」という仮説でした。
なるほど、加藤さんの仮説には、経験則が入っているから段階を超えて仮説にたどりついるね。分かり易く一つずつ解説すると、このようになるね。
アクセス数に対しての仮説 成約率1%と仮定した場合、目標とした申し込み数を獲得するためには、現状のアクセス件数は少なすぎる。 ↓ よってアクセス件数を増加させる必要がある。 ↓ しかし、いくら1万件のアクセスを集たとしても見込みのないお客のアクセスでは、成約を得るのは難しいはず。 ↓ 見込み客からのアクセスを集約する方法を模索する必要がある。 ↓ 対策効果をなるべく早く出す必要がある今回は、SEO対策ではタイムロスが起こってしまうので即効性のあるリスティング広告を行って集客を行うべきだ。 このように順を追っていけばお客様の理解も得られ、他の発展的な意見が出るかもしれないね。
確かに、私は経験則から結論を話していましたが、順を追って話していくと理解がしやすいですね。
そうだね、さらに「直帰率が高いので、ランディングページのデザインを見直す」という仮説も経験則から話しているね。 できるだけ多くのデータから仮説を立てたほうが精度が高まると思うんだ。
仮説を立てるときは、自分でも自信が持てるくらい現状のデータを集めるのがポイントだからね。
対策により変化した指標をチェックする
ここからは実にシンプルだ。加藤さんの仮説のように対策を行ったとして、それが正しかったかどうかは、どの指標に表れるのかな?
アクセス数が増加したかどうかは、そのままでアクセス数のデータをチェックすればいいですね。直帰率の増減についても、直帰率のデータから減ったかどうか確認すればいいはずです。
その通り!さらには「各キーワードグループごとに直帰率を見てみる」なんていうチェックもできるよね。 あくまで目的は成約率のアップなので、成約率のデータのチェックも必要だね。
ロバート先生のおっしゃる通りですね。
仮説を立て、実行し、その結果をウォッチしていこう。予め仮設を立てることで、どの指標が変化していきそうなのか当りをつけられるね。
そうですね、でももしも、仮説どおりに行かなかった場合はどうしたらいいんですか?
その場合は「仮説が間違っていた」ということになるね。でもこれは珍しい事ではないんだ。むしろこれにより、検証結果から、より有用な対策を講じるための布石になるんだ。解析によるデータを取っていくことで一つ一つの対策が決して無駄ではなく、有用なデータ収集になりうるということだね。
大切なことは仮説を立ててアクションを起こしてみる、ということなんだ。これによって得られたデータは、対策の成否を問わず、次のアクションに向けて貴重な財産になるよ。
まとめ
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「どの指標を改善すればいいのか?」という質問をする人たちは、本当は「まず、これをやるんだ!」という改善のとっかかりを求めているはずです。
しかし、何からやるのかというのは、それぞれサイトにより異なる。全てのサイトがアクセス解析から解決策を導き出せるとしたら、誰もが成功しているのだけれど、 現実はそう甘くないんだ。
だからこそやっていくべきことがある、非常に簡潔だ。まず、現状のサイトに対して何をして行くべきなのか、これを明らかにするんだ。
そのための3ステップが、- 「現状の把握」
- 「仮説の立案」
- 「対策で変化した指標をチェックする」
であるということだ。
多くの人はサイトの現状について把握するために難しく考え過ぎてしまい、答えを見失ってしまいがちだが、基準となる計算式で「入り口」を見つければ、自然と応えは出ることが多い。
現状把握から、仮説の検証。非常にシンプルだがこれにより、サイトにあったオリジナルな施策に打って出ることができる、もう迷わないんだ。
そして「仮説し検証する、検証データから仮説を立てる、また仮説し検証する…」という一連のアクションになる。これこそアクセス解析の基本、PDCAサイクルだ。決して難解なものではない、全てはアクセス解析というアクションを起こすかどうかなのだ。